やっぱり「若さ」って向こう見ずで、どうにも清々しいのである。
所用で学生が多く住む町に出掛けたのだが、日暮れ頃、交差点で信号を待っている僕の横を、「今すぐにでも運動をするぜ」というような服装をした4人の男子学生が通り過ぎた。彼らは笑顔だ。
笑顔の原因はすぐにわかった。彼らの左手にはから揚げ丼が乗っている。
駅のホームの立ち食い蕎麦でみられるような白いプラスチックの器に、山盛りになった飯。その上にバランスよく盛り上げられたから揚げと、たっぷりのマヨネーズ。今にもから揚げがこぼれ落ちそうなボリュームで、ちょっとハラハラするぐらい。
そして右手には割り箸だ。「今すぐにでも食べられるぜ」というスタイルであるが、同時に彼らの両手はふさがってもいる。石に躓いてもダメ、急に電話が鳴って驚いてもダメ、向こうから来た自転車を避けるのもダメ。確実にいくつかのから揚げは落ちる。そんなあらゆるアクシデントに対応出来ない状態の彼ら。
その状態で僕の横を通り過ぎながら、彼らのひとりは言うのである。
「おい、どこで食べる? オレの冷めてきた」