この人生を大海原に例えるならば、僕らがチョイスすべきはクロール泳法か、平泳ぎか、はたまた背泳ぎか。
そんな議論に花を咲かせている深夜、真っ先にお月様の虜になってしまったのはカツヨさんだった。僕は常日頃から太陽系の方々とは距離を置くようにしていたので、彼らの思惑通りにコントロールされる、ということは殆どない。
カツヨさんは、「お先に失礼するざます」といった面持ちで光年夢紀行に旅立って行ったが、僕は本日ムーンでおセンチなそちら側に行く予定はないので、後だの先だの関係ない。藤木とひじきも関係ない。
しかし考えてみると、今日のカツヨさんはいつもと違う雰囲気が漂っていたような気がする。目が少しうつろで、心ここにあらず、といった感じだった。うつむいていたかと思えば急に顔をあげて、「トーテムポールがあ・・・」などと呟き、首を縦に振り出すその様は、まるでイエスマンのようだった。
ここまで考えて僕は気がついた。そうか、カツヨさんは三代目セーラームーンだったんだ。となるとそうか、僕は猫にならなくては。にゃんまげに飛びつかなくては。こうしちゃいられないぜ。