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生乾きの与太話をモゾモゾと書いてます。口元が緩めばしてやったり。日々の隙間に挟んでどうぞ。
by lofibox
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315号 「ラテンなクッキング」
 こないだの休日。珍しく朝早くに目覚め、何気なくテレビを付けてみると料理番組が始まった。

 料理の先生である男性が、トミーズの雅にそっくりだという事実にはすぐに気がついた。本当によく似ている。ここで隣にいるのが健ちゃん似のおっさんだったら笑ってしまうけど、休日の朝から男の料理で食卓を彩っている場合ではない。

 実際のアシスタントには、正しくテレビ局の女子アナが付いており、視聴者に解りやすいようにその料理の作り方の説明、注釈を付けていた。


 だが、一生懸命説明をする女子アナとは対照的に、先生はとてもラテンな人物だった。女子アナの説明を遮って繰り出されるダジャレはとても軽快であったが、その度に女子アナの「チッ」という舌打ちが、ブラウン管越しにも伝わってくる。

 作っていたのはメンチカツのような物だったろうか。少し記憶が曖昧だけど、ひき肉を叩いていたのは覚えている。女子アナの顔が明らかに引きつった最初の瞬間が、まさにそこだったからだ。


 「こうやってね、両手でね、肉を叩くんですよ!ハイぱちんぱちんぱちんとー!」

 「こうですか?」

 「もっとリズミカルにやらなきゃダメだよ!ほらほらほらほらー!それそれそれそれーい!」

 「え、えぇと、これはあれですよね、たしか空気を抜くためにやるんですよね?」

 「ちーーーーーがうよ! たーのしいからやるんじゃない! アッハッハッハ! それそれぱっちんぱっちんと!!」

 このやり取りだ。作り方の内容にまで、ラテンのリズムが入り込んでしまっている。苦笑するのが精一杯でフォローできない女子アナ。「肉を叩くのは楽しいからやる」という内容が覆らないままに、料理は進んでいく。


 そして油の中で美味しそうに揚がるメンチカツ。それを箸で取り上げ、トミーズ先生は言った。

 「いやぁ!美味しそうな・・・ たぬき色だね!」

 女子アナ、ついにこれをスルー。ピクリとも動かない表情が見事。


 カラッとたぬき色に揚がったメンチカツは、綺麗にお皿に盛り付けられ、実に美味しそうだった。それを見ていたらお腹が空いたので、僕はすぐに朝食を取る事にした。

 が、空腹感の他にもうひとつ、この番組が僕にくれた感情は、食事だけでは満たされる事のないどこかセンチメンタルな虚無感。そのぽっかりと空いた心の穴を埋める術がないままに、僕はただ時間による解決を待つしかないのだった。
by lofibox | 2006-02-22 16:41 | ノーマルコラム
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