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会社のエレベーターの”閉じるボタン”に、日々悩まされている。
そのエレベーターは、閉じるボタンを押してから実際に扉が閉まり始めるまで、えらくもったいつける仕様になっており、そのタイムラグは約4~5秒だ。そのライムラグが及ぼす影響はというと、例えば次のようなシチュエーションがある。
エレベーターというと、乗り込んだときにひとりの場合は早々に閉じるボタンをプッシュすると思うが、そのタイムラグの4~5秒は手持ち無沙汰だし、更に足跡なぞ聞こえようものならいよいよ心拍数が高まってくる。
閉じるボタンはもうプッシュ済みであるから、あと2秒もすれば扉は閉まり始めるけれど、どうだろう?この足音はエレベーターに乗りたいひとの足音なのだろうか。もしそうだとしたら、今すぐ開けるボタンを押して待機するべきではないのか。そうだ、それが親切というものだ。
ポチッ ゴォーーン
閉じかけていた扉がまた開くと、その足跡の主は僕の視線の先を真横に通り過ぎていった。横目でチラリとこちらを見たのを僕は見逃さない。ぽっと頬を赤らめる。なんだか恥ずかしい。
誰かが先に乗っているところに後から乗り込んだ場合も、自分の降りたい階のボタンを押してから閉じるボタンをポチッと押すが、やはりなかなか閉まらない。
その4~5秒の間、僕は「キミキミ、閉じるボタンを押したまえよ」という視線にさらされるのだ。
その緊張感に負けて、もうプッシュ済みの閉じるボタンをもう一度押してしまったりもするけど、それはそれで、「もしこのひとが関東の人だったら、大阪の人間はせっかちだなあ、何度もボタンを押したりして。」とか、思われてはいないだろうか、と、やっぱり落ち着かないのである。