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何度かここで書いていることだが、会社における僕の労働スタンスは『省エネ』である。無気力を武器に、干渉を避け、「私に立ち入らないでくれたまえ。」という空気作りに日々余念がない。
そのあたりのことは、【344号 「省エネ労働のススメ」】に書いてあるので、「一度読んだけどどんな内容だったか忘れてしまった。」という人も、今日のコラムを読む前に読み返して頂ければ幸いである。 さて、自ら好んでそのようなスタンスを貫いている僕ではあるけれど、1日の半分をそれで過ごしていれば、困ることや悩むこともある。例えば今、僕の隣のデスクに置いてある美味しそうなわらび餅がそれだ。 隣のデスクは現在無人になっており、片付いたデスクの上にぽつん置いてある和風の器。足で隣のデスクを少し小突いてみると、中に入っているきな粉をまとったアレがぷるんぷるんと揺れる。実に美味そうだ。口の中にじゅわっと唾液が広がる。 しかし、だ。お昼過ぎにこのわらび餅が登場してからというものずっと横目で見ているが、どうも隣の隣のデスクの女子社員がひとりでぱくついているような気がしてならない。 だいたいこの手の物は、社員の誰かのお土産である可能性が高く、いつものそのパターンならば皆がもっと群がるはずなのだが、モノが魅惑のわらび餅であるにも関わらず、数時間たった今でも半分ほど残っているようだ。 もしかすると彼女が個人的に買ってきたものなのだろうか。しかし包装紙ひとつとってもお土産物にしか見えない。第一あんな大掛かりなわらび餅を会社で食べるように買ってくるものだろうか。不自然ではないか。 これが誰かのお土産である確証が取れれば、僕が手を伸ばすことも容易になる。”僕も食べて良いもの”であれば、「いただきます。」とつぶやけば済むからだ。 しかしもしこれが彼女が個人的に買ってきたわらび餅であった場合、「ひとつ頂いても良いですか?」という交渉から入る必要がある。確証もないままいきなり、「いただきます。」とアプローチして、本当に彼女が個人的に買ってきたものだったら、「え、私のなのに食べるんだ・・・」と思われてしまう。 ここで問題なのは、普段から彼女とお喋りをしている僕であれば、「コラッ!それ私のだよっ!」とか何とか笑い話にもなるのだが、僕が作り上げたこのキャラクターは、その言葉を飲み込ませるに十分な程ミステリアスなのだ。 もう4、5時間近く確証が持てないまま時間は過ぎ、そろそろ帰ろうかという時刻になっている。相変わらずぷるんぷるんしているわらび餅に、いよいよ後ろ髪をひかれる思いではあるが、今日のところは諦めるしかないのか。 いや、帰り支度を始めた僕に、彼女はこういうかもしれない。「おひとついかがですか?」と。 起死回生となるその一言に期待しながら、ゆっくりと支度を始めようと思う。
by lofibox
| 2006-07-10 19:16
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