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傘を巻きつける方向がわからない。
普段、僕はよほどボーッと生きているのだろうか。いったい何度まちがえれば、巻きつけた傘をまとめる凹凸が100%合うようになるのだろう。「ああ、また逆だ」と、反対方向に巻き直しては、無駄に袖を濡らす日々だ。
思い返してみれば小学生の頃、僕は『右』と『左』を、小学校のジャージに付いている名札で見分けていた。日曜日と寝るとき以外は基本的にそのジャージを着ているので、それで何の問題もなかった。名札が付いているほうが左、そして付いていないほうが右。
この話のポイントは、小学生の頃の僕は自分がそうやって右と左を見分けているということに、まったく気が付いていなかったということだ。もっとしっかりと、『理解している』とばかり思っていた。
中学生になり、名札の付いていない学生服で生活を始めた瞬間、右と左がわからないことに気が付く僕。そんな隙だらけの覚え方しか出来ていなかった自分との出会い。己を疑って生きるようになる、まさにそのきっかけとなった一件だった。それは言いすぎか。
今の僕に必要なのは、傘における『ジャージの名札』なんだと思う。「私はこうやって傘を巻く方向を覚えています」。そんな画期的なFAXをお待ちしております。