昨日は母校の同窓会があり、僕はそこで因縁深い「ビンゴゲーム」とまたも対峙するハメになってしまった。僕とビンゴゲームの軋轢に関しては、
461号 「ビンゴ in ビンゴ」を読んで頂ければわかるだろう。
わいのわいのと進行するゲームをよそに、やはりビンゴゲームに良い思い出のない恩師のS先生と僕は、相も変わらず穴の開かない手持ちのカードを眺めていた。
異変に気がついたのはゲームも中盤を過ぎる頃。S先生が、「何でこう、かたまっちゃうかなあ……」と呟いているのでカードを覗いてみると、3つ程開いている穴が全部左下にかたまって大穴になっている。と、発表された次の数字でさらに拡大。
「先生、これ陣地取りゲームじゃないんですよ……」
「だよね……」
左下から右上に向かって、まるで侵食していくかのように穴が広がっていくその様は、とてもビンゴゲームのそれとは思えず、S先生はひとりだけ違うゲームをプレイさせられていたのだ。何ということだろう。
全ての賞品がなくなりビンゴゲームが終了する一方で、こちらでもS先生の孤独な陣地取りゲームは終戦を迎えた。中心の中立陣地を含めた9マスを占領したものの、右上の敵本拠地に攻め込むことは出来ず、自陣も過半数には至っていない。
「僕の完敗だよ」と語るS先生は、負けはしたがどこか満ち足りた表情をしており、僕も今後の人生におけるビンゴゲームとの付き合い方に、新しい切り口を見出したのだった。