バレンタイン商戦真っ盛りである。
「チョコになるものは全てチョコにしてみる」。そういうやけっぱちな戦略が当たり前のように飛び交うこの空気を、僕はキライではない。奇想天外な商品が生まれていたりしてなかなか楽しい。
そんな中、今年のバレンタイン商戦に立候補してきたダークホースが、仙台名物として知られる「笹かまぼこ」だ。その名も笹かまをハート形にした「バレンタインかまぼこ」である。
元々土産物である笹かまは贈り物としてのアイデンティティを既に備えている訳だが、そこにもうひとつバレンタインの贈り物という要素も付加しようというこの試み。誕生日がクリスマスとかぶった子どもが、「誕生日とクリスマスのプレゼントは別々にちょうだいよ!」とごねている情景が目に浮かんだのは、僕だけじゃないだろう。
ピンク・黄色・緑の3色が用意され、色とりどりに見た目も鮮やかなのだが、それぞれの色の元となっているのはシャケと卵と枝豆ということで、スウィートからの距離感が凄い点にも注目したい。
「珍しいものを贈りたいという女子高生にも喜ばれています」とは、現場の声である。素晴らしいことだと思う。「なにを贈るか」という点に頭を悩ませるその時間こそが、真に贈り物なのだ。
モノが笹かまなのがどうのという問題ではないし、ましてやバレンタインの贈り物に醤油を付けて食べるというのはどうなんだとか、そういう問題でもない。悩んだあげくにこんがらがって、最終的な選択が笹かまになったとしても、それをチョイスしようと思うその心こそが愛なのだ。
なので、世の男性諸君もこの時期はしっかり気構えをしておいて、ハート形のういろうを貰おうが、ハート形のうなぎパイを貰おうが、ハート形のもみじまんじゅうを貰おうが、「それもう、もみじ関係ないじゃん!」などとツッコミを入れることのないようにしておきたい。それが紳士な対応というものだ。