「シャコタン」のことを、最近のヤングは「ローダウン」というらしい。
別に僕の車がシャコタンな訳ではないけど、「シャコタン」「ツッパリ」「ニッカボッカー」など、この類いの業界用語には趣深いおもしろフレーズが多く、「声に出して読むとムフフ語」の総本山といってもいい。
そういう観点から「シャコタン」を好意的に捉えていた僕だから、この「ローダウン」とかいう呼び名には正直ガッカリしたといわざるを得ない。
こうやって淘汰されてしまったムフフ語というと、「パンツ」の台頭で居場所を失ってしまった「ズボン」のことが記憶に新しいが、「パンツ」自体もそもそもムフフ語界の実力者であり、「下半身に着用するもの」を巡る国盗り合戦の結果であったと考えると、ふたりは良きライバルであったのだと思う。
「ローダウン」には「シャコタン」と渡り合うような実力はない。が、時勢は「ローダウン」にある。勝敗は兵家の常。不安は残る。
そもそもシャコタンとは、「シャコ」と「タン」というそれ単体で既にムフフ語である2者がくっついたフレーズで、知名度も高く、ムフフ語界の学名では「演算類加法目共演科」に分類されている。
ところが、「ローダウン」ときたらどうだ。「ロー」と「ダウン」というフツーの横文字を2つくっつけた結果、新しいフツーの横文字が出来ました。と、それだけだ。他にはなにもない。荒野である。しかも2つの意味がかぶっていて、ローなうえにダウンじゃ低すぎて道を走れないだろう。
ともかく今後も「シャコタン」には、「車高を低く改造する」という領地をしっかりと守り通して欲しいものだが、今回のコラムで生まれたこの「声に出して読むとムフフ語」という定義は、今後の「犠牲フライ定食はじめました」でも頻繁に出てくることになるだろう。
これまでのコラムの中にも、単におもしろいフレーズとして紹介した言葉がたくさんある。最近では「フナコシ」もそうだ。今回、それらをまとめた定義としてしっくりくる言葉を思いついたという訳で、僕もうれしい。
それと、冒頭でいかにも車を持っているふうな書き方をしたがもちろんウソだ。